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フロント型企業とイネーブラ型企業 -企業分類における2つの類型-

企業の型 -2つの分類-

家族や友人を人に説明するときに、適当なタイプに分類する言葉を使ってその人の性格や特徴などを説明することがあると思いますが、タイプに分類して特徴などをわかりやすくするやり方というのは、企業の特徴を捉えたり、企業に合った戦略を検討するときにも使ったりします。

 

本記事では、企業を分類する手法の一つである「フロント型企業」と「イネーブラ型企業」について紹介したいと思います。

元々、この分類の考え方は野村総研NRI)が提唱した考え方で、以下の論文にその考え方がまとまっています。

(参考資料)グーグルゾン時代の企業戦略
      http://www.nri.com/jp/opinion/chitekishisan/2005/pdf/cs20050903.pdf

2005年9月発表と、かなり前の情報ではありますが、ここ最近のビジネストレンドにも合ってきていて、改めて見直していくべき考え方だと思っています。 

 

フロント型企業

まずは「フロント型企業」です。フロント型企業の説明としては、「顧客との接点を持つ」という点が端的な説明です。顧客との接点を持つから「フロント型」なのです。

ほかにフロント型と分類されるための要件がいくつかあります。

  • 大規模(数百万~数千万)の顧客基盤を持つ。または、特定分野で高いシェアを保有する。
  • 上記の顧客のIDもしくはデータベースを持つ。
  • マーケティング力、製品/サービスの企画力を持つ。

これらの要件を満たす企業として挙げられているのが、論文の題名にもなっている「グーグルゾン」です。こんな企業は実在しませんが、GoogleAmazonが合わさった名前で、両社が今の顧客資産やリソースを保持したまま合併した企業がイメージされています。もしグーグルゾンのような企業があったら、最強のフロント型企業になるということです。

フロント型企業を表すイメージとしてこれほどわかりやすいイメージはありません。

 

イネーブラ型企業

では次にイネーブラ型企業です。こちらはフロント型企業とは違い、顧客接点を持たないことがアイデンティティです。ちなみに「イネーブラ」とは「~できるようにする物/者」という意味の英語です。いわゆる裏方という言い方がわかりやすいかもしれません。

こちらもイネーブラ型と分類されるための要件がいくつかあります。

  • 開発や生産業務への精通
  • オペレーションの質と高い生産性

上記はNRIのレポートからの抜粋ですが、私はこのほかにもイネーブラ企業に求められる要件がいくつかあると考えています。

  • 様々なサービスから共通的に利用できるインフラを持っていること
  • それらのインフラを使われやすい形態で提供していること

要は、顧客接点は持っていないけど、他社が魅力的だと思ってくれるようなコアな技術やサービスをビジネスにつなげられる企業がイネーブラ企業となりえるということが言えると思います。

 

それぞれの事例

NRIの論文では、フロント型企業の例としてANA、イネーブラ企業としてスルガ銀行やリコーなどが紹介されています。それぞれの詳細は論文を確認いただければと思いますが、ここではもう少し最近のイネーブラ型企業の事例を紹介します。

(フロント型企業はイメージしやすいので事例は割愛)

Webサービス(Webインフラ)
  • TwitterTwitter
    twitterはもちろん自分でサービスを提供していてフロント型ではありますが、色々なWebサービスの認証部分を肩代わりしていたりして、そういった機能の部分ではイネーブラ型のビジネスをしていると分類できます。
  • Google Map(Google
    twitterと同じく自分でサービス提供もしていますが、色々なWebサイトからAPI経由でマップにアクセスできるような仕組みも提供していて、その部分はイネーブラ型であると言えます。
クラウドITインフラ
  • AWSAmazon
    AWSがエンドユーザに直接サービスを提供している形態はほとんど無く、AWSのインフラ上に各社がサービスやシステムを構築してエンドユーザが利用する形でAWSは使われています。これぞ正にイネーブラ型での提供となります。
    ちなみに、ショッピングサイトのAmazonの方はフロント型の代表例です。
通信インフラ・電力インフラ
  • 光コラボレーション(NTT東西)
    2014年5月にNTTから光回線の卸サービスである光コラボレーションが発表されましたが、これは今までフロント型で直接光回線サービスをコンシューマに販売していた形態を改めて、別のフロント型企業経由で(回線サービスを卸して)、光回線サービスを提供するモデルに転換したものです。フロント型からイネーブラ型にシフトした典型的な事例と言えます。
  • 電力小売自由化(電力会社)
    2016年から電力の小売事業が自由化されますが、発電・送電・配電部分はしばらくはこれまで通り電力会社が行います。コンシューマから見ると、電力会社が1段奥に下がって、フロント型企業が間に入ってくることになります。電力会社はフロント型をやめた訳ではありませんが、一部イネーブラ型にシフトする事例となります。

ここでは大きく3分類の事例を挙げましたが、下に行くほど最近の話です。少し前まではWebのような比較的軽い分野でイネーブラ型ビジネスが展開されてきましたが、徐々に、いわゆる従来のインフラビジネスの領域にまでイネーブラ型が展開されてきている状況となっています。

 

まとめ

  • 企業は「フロント型」と「イネーブラ型」に分類される。
  • フロント型は大規模な顧客基盤を持ち、イネーブラ型企業の持つリソース組み合わせつつ顧客基盤を活かしたビジネス戦略を展開する。
  • イネーブラ企業は他社と競争差別化できる技術やサービスを持ち、様々なフロント型企業を経由して幅広く展開していくビジネス戦略をとる。
  • 最近ではイネーブラ型企業へのシフトがインフラビジネスにおいても進んできている。

 大規模な顧客基盤を獲得し、それを維持していくにはそれなりのコスト体力が必要であり、そのような基盤を保持する企業は、今後どんどん収斂していくと想定されます。また、競争差別化できるほどの技術・サービスを持つことの難しさもあると思います。

 今後の企業は、このような分類や、それぞれの特徴を踏まえて自社の戦略を決定していく必要があると考えます。